山で出合う危険な昆虫
2017.03.27
宮島 陽子
山を歩いていると、様々な危険な動物に出合う。クマについては、以前「クマとの遭遇」に記載したので、今回はクマ以外の小動物(昆虫)について、
私の体験等を中心に簡単に記載しようと思う。
Ⅰ. マダニ
1 マダニの体型等及び食いつき方
体長2~3mm、嘴があり足は8本、クモに似ている。
嘴で皮膚の柔らかな所に取付き、血を吸い続けて何倍もの大きさになる。
徐々に足も体の中に、食い込んでゆく。
無理に引き剥がすと、嘴や足が皮膚に残ってしまう。
マダニ(ネットより) 皮膚に食い込んだマダニ(ネットより)
2. マダニのいる地域や場所
日本中にいるが、主に北海道や東北地方のヤブに多く存在する。
特に日高山脈は多く、南端のラッコ岳は有名である。
とはいっても、Kさんのように身近な百蔵山でもやられる場合がある。
雨の後は、多く出るような気がする。
残雪期にも出るので、雪山でも油断は出来ない。
3. 私の経験
・4月に東北の矢筈岳から帰ると、胸に何か取付いている。マダニが頭を体に突っ込み、足が
4本動いていてゾッとした。ゴールデンウィークで、医者がやっていない。ウィスキーをテ
ィッシュに含ませて、浸すと死んだが取れない。4~5日マダニの死体を胸に付けたままにし
ておく。連休明けに医者に行こうと思った朝、取れていた。
・ラッコ岳で10ヶ所以上喰われたが、休憩の度にお互いチェックして、取ってもらう。その
時、ガイドにマダニ専用のピンセットによるマダニの取り方を習う。
・1839峰の下山時に、先頭を歩いていて、ササヤブで40匹近く取り付かれ、そのうち5匹に
食いつかれた。その時は、専用のピンセットを持参していたので、仲間にピンセット取って
もらう。
・仲間の例示
・東北の山でマダニに食いつかれたものの、会社を休めず、週末まで肩で養っていた人が
いる。その時、マダニは血を吸って、どんどん大きく成長したとの事である。
・北海道で腹に食いつかれ、無理やり引っ張り、嘴を残してしまった。女性軍が針で突つい
て取ろうとしたが、うまく取れず、帰宅してから病院に行った。
・頭部に食いつかれた女性は、自分で車を運転して皮膚科に行き、医者に「外科で切開する
よう」言われ、真っ青になり、「先生、救急車を呼んで下さい」と叫んで、医者や看護婦さ
んに大笑いされた。
4. マダニの予防
・長袖、長ズボンで肌を出さない。
・マダニのいる地域を歩く場合は、休憩の度にお互いチェックする。
・ヒダになった所に大量に取り付いている場合があるので注意。首に巻いたタオルも注意。
・ザックに付いて、家に持ち帰る場合があるので油断しない。ザックの置き場所に注意。
5. マダニに食われた時の対処法
私は下記の方法を取っているが、危険性もあるので、心配な場合は至急皮膚科か外科に行く。
・専用のピンセットの利用。マダニの腹の付け根の細い所をピンセットで挟み、グルグル回し
ながら気長に抜く。専用ピンセットは、バネ仕立てになっていて、挟んだ所が固定される。
決して無理に引っ張ってはいけない。足や嘴が体に残ってしまう。
・ウィスキーのような高濃度のアルコールをティッシュに含ませ、アルコール漬けにする。
・ワセリンのような油で、窒息させる。
マダニ専用のピンセット
マダニの腹の付け根をピンセットで挟み、グルグル回しながら、マダニを抜く。
大きくて挟めないマダニは、右の隙間に挟み、同様に回しながら引き抜く。
6. マダニの危険性
マダニの恐ろしいのは、死に至る可能性のある下記の病原体を媒介する場合がある事である。マダニに食われて具合いの悪くなった人や心配な人は医者に行く。潜伏期間は1週間~2週間程度後だが、数週間と長い場合もあるので、マダニに喰われた可能性のある人は、しばらくは体調に注意する必要がある。ちなみに1匹取るのに、1万円程度もかかる事が多いようだ。
・ポレリア → ライム病
・リケッチャー → 日本紅斑熱、ツツガムシ病
・SFTSウィルス → 重症熱性血小板減少症
10~30%が死亡し、西の方からだんだん東に拡大してきている。
Ⅱ. ハチ
ハチに刺される事も割合多く、スズメバチ、ミツバチ、クマバチ、ジバチ等が思い浮かぶ。ハチの怖いのは、アナフィラキシ―ショックになり、死に至る場合もあるからである。そこまでではなくとも、ハチ毒で傷口は腫れ上がり、かなり痛い思いをする。
1. ハチに刺されないようにするには
下記は絶対ではないが、少しは効果があるかも知れない。
・なるべく長ズボン、長袖の服を着る。
・クマが天敵なので、黒い服は避ける。私は紫系統の服で、良くクマバチに刺されるので、最
近は避けている。白が比較的良いらしい。
・ハチを見たら、刺激しないよう静かにゆっくり歩く。間違ってもハチの巣を蹴ったりしない。
私は、会津朝日岳で、何度もクマバチに頭の周りをグルグル飛ばれた。じっとしていても、
去って行かないので、静かに移動して難を逃れた。
2 ハチに刺された時の一般的な対応
・刺したハチは、敵の存在を知らせるフェロモンのような物質を出し、仲間を呼ぶので、まず第一に、その場からある程度離れる。
・傷口を水で洗い、ポイズンリムーバーで、毒を吸い取る。
・また水で洗い、薬を塗る。毒はタンパク質であるから、昔言われた、アンモニアや尿は効果が無い
・症状にもよるが、下山したら病院に行く。
ポイズンリムーバー① ポイズンリムーバー②
吸い口は1サイズ 吸い口は4サイズあり、吸引力が強い
3. アナフィラキシ―ショックについて
同じ毒を持つハチに二度目刺されると、人によってはハチ毒によるアレルギー反応を起こす場合がある。私も二度目にクマバチに刺された時、同時に4ヶ所刺され、アナフィラキシ―ショックを起こして、大げさに言えば死にそうになった。
それ以来、ポイズンリムーバーとアレルギー抑制のための筋肉注射・エビペン(医者に特別に処方してもらっている)を持ち歩いている。下記に私がアナフィラキシ―ショックになった時の症状を記載する。このような症状が出た場合は、20分程度で死に至る場合もあるので、一刻の猶予も無い。ちなみにハチによるアナフィラキシ―ショックにより、年間20人前後の人が亡くなっており、クマによる死者より多い。
・すぐに全身にジンマシンが出て、異常に痒く、体も異常に熱くなる。
・呼吸が苦しく、胸苦しい。
・座っているのも苦しくなり、横になる。
・体の震えも出て来る。
・目の前がボーっと暗くなり、色彩感覚がおかしくなる。
(私はむくみが出なかったが、手足がむくむと、内臓も腫れていて危ないらしい。)
Ⅲ. ヒル
ヒルに刺された人は多いと思う。マダニやハチに比べると、あまり命には影響しないと思うが、血をたくさん吸われて、しかも血が止まらないのは、気持ちの良いものではない。1~2センチのヒルが血を吸って、何倍もの大きさになり、無理にはがすと、血が流れ止まらない。
しかも、ヒルはなかなか死なない。氷河期にも滅びず、山火事にあっても地面に潜って生き延びる。一度血を吸うと、2年間生きられ、卵をたくさん生むと、どこかで読んだ事がある。ヒルを殺そうと思って、石でつぶしてもゴムのように弾力があり死なない。塩をかけるのが良いらしいが、ヒルをちょん切るための、ハサミを持ち歩いている人もいる。
私も東丹沢の山や沢で、何度かやられている。ヒルにやられないようにするため、私は以下の注意をしている。
・半ズボンは避ける。半ズボンで屋久島を歩き、酷い目にあった。
・女性はお花摘みに注意。どうしても陰でするし、ヤバイ箇所をやられる。
・沢にはヒルが多い。なるべく日の当たる乾いた所で、着替える。
・衣類や荷物をやたらに地面に置かない。洗濯機に数匹のヒルが這っていた事がある。
・ストッキングの網は通れないようなので、タイツは良いかも知れない。
・沢でのテント泊の場合は、ビニールシートの上には、這って来ないような気がする。
・周囲に殺虫剤のような薬品をまくと、進入してこないような気がする。